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アートの力を取り入れた点字ブロックをまちづくりへ- STREET ART LINE PROJECT様とのコラボレーション-

100年に1度とも言われる大規模再開発が進んでいる渋谷駅周辺。東京観光やレジャーの新たな玄関口にもなっていますが、視覚障がい者が行って楽しめる場所になっているのでしょうか?

そんな渋谷のダイバーシティ&インクルージョンに本気で取り組んでいるSTREET ART LINE PROJECTの阿部様、車戸様に、はつゆめJAPANがインタビューしました。

「アートでつなぐ、視覚障がい者の新たな道。」 – STREET ART LINE PROJECT –

代表:阿部佑紀 様、共同代表:車戸高介 様

【プロフィール】

マーケティング、都市開発、当事者である視覚障がい者が一つのチームとなって実行委員会を結成。点字ブロックにアートを施すというプロジェクトに渋谷発で取り組んでいる。1st PROJECTは2021年4月28日~5月9日に開催。企業や行政を巻き込み、プロジェクトのバージョンアップや講演、ワークショップに取り組んでいる。

STREET ART LINE PROJECT webサイト

再開発で便利で快適になったはずの渋谷なのに、点字ブロックが剥がれたまま

まずは、STREET ART LINE PROJECTの事業の原点を教えてください。

以前、ACCと渋谷がコラボしてダイバーシティー&インクルージョンを進めながら社会課題を解決していくというコンペが開催されていまして、それでファイナリストまで行ったんです。
我々としては「STREET ART LINE PROJECT」は社会的に意義があるんじゃないかという考えを持って、渋谷の中のいろんな方々に声をかけていたところ、渋谷駅前エリアマネジメント様がお声かけくださって実行するに至ったという経緯があります。

なぜ点字ブロックに着目されたのですか?

渋谷を社会課題という視点で歩いてみた時に、点字ブロックが剥がれていたり、途中までつながっていてそれからパタッとなくなってしまっていたりする状況が実は結構あるなということに気づきまして。
でも視覚障がい者にとっての点字ブロックって、我々にとっての道と同じだと考えると、それって結構危機的状況と言うかあってはならない状況だよね、と。

そこで、この見過ごされた問題に、晴眼者にも意識を向けてもらうような取り組みができないかということで、2nd PROJECT として2023年3月25日から、5月7日まで期間を設けて渋谷スクランブルスクエアの2階の通路をお借りしました。

東京視覚障害者協会様の皆様にヒアリングしたり、実際に当事者の方に実行委員会に入ってもらったりして、点字ブロックとしての機能性を保った上でアートを施すことに成功しました。

実現にあたっての障壁はあったのでしょうか?

現在のプロジェクトは公共的な空間ではあるけれど、建物の所有は渋谷スクランブルスクエア様になっていて民間のものなので、許認可がいらない形で始めました。
しかし、その建物だけはできるけれど、その後の延長が必ずしもできるわけではない―、そこは割と課題だと思っていて、責任の所在がビルをまたぐとガラッと変わりますから。

また、我々が一番課題だと思っているのは公道なのですが、東京都には「屋外広告物条例」があって、点字ブロックにアートを施せないという課題があります。

対策として考えているのは、今までにない事例なので、民間施設をベースに取り組みをして実績を積み上げることですね。
特定のエリアマネジメント団体の協力を得て条例を突破する、行政の理解や政治家の協力を得て、特定のエリアを「特区」にしてもらう、規制緩和をしてもらうといった働きかけが必要だと思っています。

持続可能なモデルへ―企業のSDGsへのニーズの受け皿を目指したい

代表の阿部様にとって、この事業への原点は?

僕個人としては障がいを持っている親族がいて、幼少期からいろんな障がいの方と触れ合う機会がありました。
視覚障がいではないのですが、接し方とか障がいに対する知識不足を感じる目線というのには結構敏感な方なんです。

この事業で起業をする気持ちはおありですか?

STREET ART LINE PROJECTは非営利な活動なので、なかなかこれで生活を回すといったことはできていない状況です。
資金面も毎回課題になっていて、今この事業で売り上げがない状況です。
それぞれ別の会社に所属して仕事をして、それ以外の時間でこの活動をしています。

ただし、持続可能なモデルにするためには、スポンサーやキャッシュポイントは必要です。
世の中にもSDGsの潮流が生まれているので、企業とも積極的に話をしたいです。
候補はやっぱり施設や私有地を持っているデベロッパー。実証実験のお声かけをいただくこともあるので、まずは事例を増やして、後に続くプロジェクトを生み出していきたいです。

アートの部分はどうやって生み出している?

実はアートは毎回変えています。今回のアートワークは、事前にワークショップを開いて視覚障がい者からアーティスト、まちづくりに関わる渋谷の関係者含め全員のアウトプットがベースになっています。

そういう「意味が載せられる」プロジェクトになっているので、決して広告にはしたくないのですが、今後、企業が発信したいメッセージが載せられるものにできればという思いもあります。

ブランディングという価値を認識してもらえれば、企業が協力する必然性も生まれると思うんです。

――はつゆめJAPANが実際こういう社会課題解決に挑んでいる団体さんにインタビューを始めたきっかけは、社会課題解決を事業のど真ん中に置くというのをあえて中小企業から行うべきだという発想からなんですね。困難に直面すると、やっぱり一人、一社でできることってすごく限られてしまって。法律の壁にぶち当たってしまったり、儲からなくて辞めてしまったりすることがあります。そこで色々な会社が手を取り合って行っていこうと。

渋谷から全国へ。外国人の方にも興味を持ってもらいたい

今後、渋谷以外に展開する動きは?

正直今いろんな自治体と話していますが、次はまだ決まっていません。
渋谷でやっている活動をいろんなところにプレゼンさせてもらう機会は結構作っています。「次にここに建物が建つ」みたいな情報を取りに行っています。

新しく建てる施設に点字ブロックや点字プレートが敷かれるタイミングで提案ができるのが一番良いと思っています。

2025年万博に向けていい取り組みなのではないでしょうか?

パラリンピックは終わってしまいましたが、世界的なイベントにはぜひ出させていただきたいです。万博敷地内にもバリアフリーエリアが設けられると聞いています。「福祉の未来」みたいなコンセプトで。
ちなみに、アート点字ブロックは世界を見てもオンリーワンの取り組みなので、そこもアピールしていきたいですね。

インバウンドにも関連がありそうです。

アート点字ブロックは外国人の方も好きなようです。こないだ現地に行ったときも写真を撮っている人でにぎわっていました。
外国人の方にも、写真で拡散するなどできることから協力していただきたいです。

また、規制の問題もあり、新しく点字ブロックを敷くことが困難でもあることから、我々のアートは既存の点字ブロックの上にフィルムで被せられるようにしてあるんです。
観光地やイベントからお声をかけていただければ、ぜひぜひ全国展開したいですね。

あらゆる不便をゼロにする、ユニバーサルなまちづくりを理想形に

最後に、このプロジェクトの未来のビジョンを教えてください。

視覚障がい者の方が行きたい場所に行ける街づくりがベストです。それが率直に今できてない状況なので。
視覚障がい者の方々にインタビューしてみると、東京の街、渋谷だけでもこんなに行けない場所がある。繋がっていない、一人で行けないというのです。

こういう不便なところを減らしていってゼロにするというのが将来的なゴールです。我々だけでは限度があるので、活動に共感した方々がどんどん同じような取り組みを展開して全国的にゼロにするというのが理想ではあると思います。

似たような話で、車椅子で移動できる場所がつながっていないという事例も聞きます。ベビーカーで移動できない事例まで含めると、より多くの人が当事者となるでしょう。

我々も普段、点字ブロックだけに目が行きがちなんですけど、あらゆる当事者を考慮したンクルーシブデザインという視野で取り組んだほうがいいのかもしれません。

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