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学生のベンチャーマインドで挑む社会貢献事業-NPO法人CORUNUM様とのコラボレーション-

現代美術、ましてや障害者アートは美しいのか、魅力的なのか―—。福祉施設で「頑張って描きました」と並べて紹介される作品からは、作品本来が持つパワーや芸術性が損なわれているかもしれません。

そんな作品に脚光を当てようと活動しているNPO法人CORUNUM(コルナム)のメンバーお2人に、はつゆめJAPANがインタビューしました。

障がいのある方を中心に様々な方が描いたアート作品及び創作活動を発信-NPO法人CORUNUM-
共同代表 桐原様、国内営業部 和田様

【プロフィール】

学生団体として発足し、2023年にNPO法人化。障がいのある方を中心に様々な方が描いたアート作品及び創作活動を積極的に公開し、その作品のデザイン化、商品化を推進。障害者アート界に新風を吹き込むべく活動中。支援・交流対象は障がいや疾患のある子どもたち、発展途上国の子供たちなど広い範囲に及んでいる。

NPO法人CORUNUMのホームページ

マイノリティーという社会課題に、自分らしく挑むことにした

まずは、CORUNUM様の設立経緯を教えてください。

共同代表の有山が大学2年生の時にスペインに留学しており、現地の子どもたち、特にストリートチルドレンとの出会いを経験しました。帰国後、子どもをめぐるさまざまな問題に対して何かアプローチができないかというところから始まった活動です。

なぜアートを選んだのかというと、「アールブリュットアート」というものがフランス、スペインを中心に流行り始めていたからです。日本ではアールブリュットアートは今のところ浸透しておらず、その代わりに「障害者アート」として語られています。

障害者アートと言えば公共プロジェクト、つまり福祉的な側面が強いプロジェクトになってしまい、アールブリュット本来の意味である、既成概念にとらわれない芸術的な価値観がどうしても弱くなってしまいます。

具体的には、展覧会を開くときに「障害者手帳をご提示の上1人1作品まで展示します」というような募集があったりするのです。
そして、障がいを持っている子が頑張って描きましたという作品の紹介のされ方がすごく多いのが課題としてあるので、そこに対して私たちが何かアプローチをすることで、もう少し共生的につながれるような社会ができないかというところでアートを取り扱い始めました。

ただし、アートをご紹介するだけの活動にはとらわれていなくて、障がいを持っている人たちの価値観にふれることで、人々がつながれるような社会を作っていこうということを団体設立の趣旨としています。

――活動メンバーの中に障がいの当事者がいらっしゃったり、身近な人に当事者がいらっしゃったりするのでしょうか?

個人的な話をさせていただきますと、中学生時代に野球をやっていたのですが、部活中にダウン症の選手と一緒に野球をする場面がありました。
じゃあその人ができること、できないことは何か、どういうふうにしたらその人が喜べて、特性が生きるような部活になるかなど、結構考えさせられた部分もあって、そのときの経験は少なからずきっかけになっていると思います。

社会全体としては、興味関心がお互いにないがゆえに課題や溝が広がっているという構造があると思います。家に障がい者はいないし、障がいを持つ友達も一人もいないし関係ないですと言ったら「以上」じゃないですか。障がい児を持った親だけが悩めばいいのかとか、特別支援学校の人たちがやればいいのかというと、そうではないと思うのです。
無関心を関心に変えるスイッチを切り替えるという取り組みがすごく大事だと思っています。

実は、CORUNUMの個々のメンバーはさまざまな課題意識を持って集まっています。
例えば、障がい児の親御さんの支援をしたいと動いているメンバーも多いです。他には高齢化社会や核世帯化で発生するシングルマザーの支援や、その働き口の確保をしたいと活動してくれています。
その先にやはりお子さんがいて、さまざまな連携が可能かなと思っています。

「はつゆめJAPAN」では、外国人の人材紹介をしていく中で未だ差別的な対応が改善されていないと感じることがあります。見た目では分からないマイノリティーの方もいます。

それに対しては、コミュニケーションの壁があると思います。
障がいを持っている人と触れ合う機会が多いので、やはり相手との意思疎通が難しいと感じていて、関わり方をもっと知りたいと思ってCORUNUMの活動をしています。
そして、アートというのは言葉以外のコミュニケーションツールであり、誰にでも伝わりやすいので、アートはコミュニケーションの一つの有力な手段であると感じますね。

ボランティアをすることで、価値観が変わる、深まる

日常的には、どのような活動をしているのですか?

CORUNUMが主催する展覧会。2日間で100名が来場

子どもたちに向けた絵画教室や展覧会などのイベント企画・運営とアート作品を活用するアイデア出し、加えてSNSで発信することをメインコンテンツに置いています。

イベントやプロジェクト別のミーティングが2、3週に1度くらい、全体のミーティングが月に1度あります。
オンラインが中心の団体ではありますが、みんなで価値観を話し合うような場を設けるように工夫しています。

関東の大学生で立ち上げた団体ですが、関西や北海道にもメンバーがいます。

メタバースの夏祭り“メタ祭2023夏の陣”に出店

参加者はどういった人ですか?大学生や高校生が多いのでしょうか?

はい。学生が主軸の団体なので、活動期限は学校卒業までというメンバーが大半です。
社会人が参加する場合は、忙しいということもあり、プロジェクトメンバーになるというよりはサポートや助言に回っていただくケースが多いです。

私たちは大学入試では総合型選抜、大学に入ったらフィールドワークと、座学だけではダメで、体験的に学びなさいと言われ続けている世代です。

ボランティアの出発点はそれでも、社会勉強として間違っているわけではないのですが、やはり自分の意思としてもう少し「何がやりたいか」という部分が出てくると成長できるのかなと思っています。

参加する人に私がよく話すのは、ここでの活動は究極のベンチャーみたいな感じなので、自分がやりたい方向、つまりこういう課題を感じたのでこういうプロジェクトやってみたい、こういうことに挑戦してみたいという思いがより強ければ強いほど活躍できるはずだということです。

高校生が成長したな、と思った瞬間に立ち会ったことは?

今高校3年生で、私が次に引き継ごうと思っているメンバーがいるのですが、そのメンバーも最初はアフリカの子どもに対するサポートを行う授業を聞くことから始めたのですが、今は国内の子供たちの交流会のリーダーを務めています。

活動を通して、価値観の変容というのは結構あったのだろうと思います。
ただ、軸の部分はやはり変わっていないと思っていて、困っている人や今何か苦しみがある人のサポートをしたいという気持ちは元からあったと聞いています。そして、行動を起こせた場がCORUNUMだったということです。

CORUNUMの中で特に大事にしているのは、ゴールにどうやって向かっていきたいか。
例えば海外に関わりたい人だったら、どういう仕事をしてどういう人にどういう影響を与えたいのかをしっかり可視化していく。そのためのチャンスを与えたり、対話の場を作ったりすることが、メンバーの成長にとってすごく大事かなと思っています。

成長を続ける、自由なアートのプラットフォーム

北海道と東京の施設間で行った、絵はがき交換企画

アートをつくってくれるマイノリティーの方はどのような方々ですか?

イベント来場者の世代は幅が広く、例えば交流会には一番上は100歳を超えた方に参加してもらったり、小さい子どもだと3歳、4歳の子が参加したりしています。

アーティストはと言うと、学生団体から声をかけているので反応しやすい年齢ということで、お子さんからの投稿がかなり多くなっています。
お子さんが1人で描いた作品ももちろんありますが、親御さんと一緒に書いた作品と言ったような、作品のバックグラウンドも大事にしています。

子どもたちだけでなく、例えば就労継続支援A型・B型事業所に通っていてアートにすごく興味があるような方も結構いらっしゃって、大人の方の作品も随時更新をしています。

福祉系展示会のような「1人1作品」といった制約はないので、CORUNUMがいろんな人がいろんな作品を投稿でき、紹介したい作品をどんどん紹介していけるようなプラットフォームになればと思っています。

NPO法人化で、持続する事業への取り組みも

CORUNUM様はNPO法人化されたとお聞きしました。

はい。2023年6月からNPO法人格を取って活動させていただいています。

活動は2021年に始まり、今ではメンバーが150人ほどに拡大しています。
はじめは大学の委員会的な感じでしたが、今では多くの大学から参加があり、大学生だけでなく高校生のメンバーも増えました。

学生団体というのは1代目から2代目には思いがすごく伝わります。じゃあ次のメンバーがバトンを受け継いでくれるのか、というのが学生団体の宿命でもあります。

この団体をどう引き続き伸ばしていくか、10年、20年、もしくは50年延ばしていくためにはどういう仕組みづくりが必要かという課題に対する解決策がNPO法人化でした。

法人になったのでミッションもビジョンもできました。ただ、私が伝えるビジョンがトップダウンである必要はないし、今後活動の形も変わっていいと思います。その年のリーダーが、自分たちの言葉で価値観を表明するのが良いと思います。

法人化したことで、社会的な認知や信用も上がったのではないでしょうか?

CORUNUMアーティストが描いたフクロウの絵がドッグウェアに

はい。今動いているプロジェクトで言うと、ドッグウェアを作っているメーカーさん。大きな製作会社さんなのですが、そこでドッグウェアを作る時にCORUNUMのアーティストが描いたデザインを採用してもらって販売していくような仕組みができました。

このドッグウェアは全国のホームセンターで販売され、CORUNUMの全国的な実績ができた記念碑的なプロジェクトになりました。

CORUNUMでは「国内営業チーム」という企業と協働するためのチームを形成しています。
アーティストのデザインを気に入ってもらい、商品化やノベルティーへの採用をしてくれるような案件があれば、私としてもぜひ参画したいと思います。

「はつゆめJAPAN」の運営母体である台日商事は、さまざまな業界の経営者とのネットワークを持っています。今後協業したいパートナーはありますか?

行政や民間の企業に対してのアプローチは今後強化していきたい分野です。
既に今進めている事業が2つあります。1つは、デザインでの企業様との協業を伸ばしていきたいということ。今はドッグウェアの活動がメインですが、雑貨や洋服など、アパレル系の企業様とつながりができれば嬉しいです。

2つ目は福祉施設向けのサービスです。児童福祉施設や児童館などでの絵画教室の実施の場を増やしたり、新しい場所で交流会などのイベントを実施したりといった取り組みです。

さらに、海外のさまざまな国とつながり、創作活動を応援するような場所を作ろうというのが3つ目の取り組みです。

特例子会社や就労継続支援事業所とは違う方向性に向かっていきそうですね。

自治体公共weekへの共同出展で作品を披露

私たちは、障がいのある方への働く場の提供を第一にしているわけではありません。むしろ、良い作品を企業や社会に送り出すお手伝いがしたいです。

それぞれのアーティストのバックグラウンドを生かした作品の紹介や展開を重視しているので、福祉行政では対応できないニッチな部分を担っているのではないでしょうか。

社会貢献に取り組んでいる企業様と協業していきたいと思いますので、企業のCSR担当の方や、NPOとの連携に興味のある方がつながってくだされば一番いいかなと思っています。

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